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倍音
倍音が並ぶ位置は声の高さで決まりますが、そのどれが強く聞こえるかを決めているのは声道の形です。
最終更新
倍音とは、ある音を作っている、基準となる音(基音)とその整数倍の高さを持つ音の集まりのことです。たとえば「ラ」の音を出したとき、まさにその「ラ」の音が基音にあたります。人の声も、耳には一つの音として聞こえますが、実際には複数の高さの音が同時に重なってできています。このサイトでは、基音そのものを第1倍音とし、周波数がその2倍・3倍……になる音が、第2倍音・第3倍音……です。基音を倍音に含めない数え方も一般に使われていますが、この数え方で統一します。
声は「声帯の音」と「声道の増幅」の掛け合わせでできる
耳に届く声は、声帯が出す音(源)と、声道による増幅(フィルター)を掛け合わせたものです。
源となるのは、声帯の震えが作る音です。この音は、基音とその整数倍の高さを持つ倍音が、高い方ほど弱くなりながら並んだ形をしています。倍音が並ぶ位置を決めるのは、声の高さだけです。並びを保ったまま、位置だけが変わります。
フィルターとなるのは、声道(のどから口までの空間)の形が生み出す増幅のクセです。声道は特定の高さの帯域を強め、どの帯域を強めるかは声道の形だけで決まります。たとえば「あ」と「い」は、同じ高さで出しても違う音に聞こえます。口の形によって声道の形が変わり、強められる帯域が移動するためです。この、声道が強める特定の帯域の呼び名が「フォルマント」です。
源とフィルターは別々に動き、声の高さを変えると倍音の並びが横にずれ、声道の形を変えるとフォルマントの位置が変わって、別の倍音が持ち上がります。この源とフィルターの枠組みは音響学で一般的に使われており、Castellengo, Henrich Bernardoni(2014)も同じ枠組みで声を説明しています。
フォルマントは「音」ではなく「増幅のクセ」
フォルマントは、独立した1本の音として鳴っているわけではなく、声道がどの高さを強めるかという増幅のカーブそのものです。
ある倍音が強く聞こえるとき、それは「その倍音がフォルマントである」ということではなく、「その倍音の位置がフォルマントの山に近いため、相対的に強い」ということです。この山の正確な位置は、倍音の並びから計算で逆算して求めるのが一般的ですが(Makhoul, 1975)、計算の前提によって少し変わる推定値として扱われます。
どの倍音が強められるかが、声の明るさや通りの印象に関わる
どの倍音が強められるかが、声の明るさや通りの印象に関わります。
たとえば、声の高い方の成分が、低い方の成分に比べてどれだけ残っているかを数字にしたのが抜け(SPR)です。加工した歌声を聞いてもらった研究では、この数字と「響きのよさ」の評価とのあいだに結びつきが見られました(Omori ほか, 1996)。抜けが見ているのと同じ、声の高い方の成分に現れる山がシンギング・フォルマントです。強められるのが高い方とは限らず、いちばん低いフォルマントを第2倍音に合わせるベルティングのようなやり方もあります。
次に読むもの
- シンギング・フォルマント — オーケストラの音の成分がちょうど弱い高さに声の成分の山ができると、かき消されにくくなるという説明を知る
- 声道の大きさ — 口の形だけでなく、のどの奥の広さでも声道の形は変わると知る
- ストロー発声 — ストローをくわえて、声道の形が変わった状態で声を出す練習をする
references / 出典
- Castellengo, M., & Henrich Bernardoni, N. (2014). Interplay between harmonics and formants in singing: when vowels become music. Proceedings of the International Symposium on Musical Acoustics (ISMA2014), Le Mans, France, 433-438.
- Makhoul, J. (1975). Linear Prediction: A Tutorial Review. Proceedings of the IEEE, 63(4), 561-580.
- Omori, K., Kacker, A., Carroll, L. M., Riley, W. D., & Blaugrund, S. M. (1996). Singing power ratio: Quantitative evaluation of singing voice quality. Journal of Voice, 10(3), 228-235.